タイトル | おすすめ度 | 公開時期 | 邦・洋 | 上映時間 |
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北京ヴァイオリン | ★★★ | 2003年4月 | 中国映画 | 1時間57分 |
あらすじ
男で一つでチュン(タン・ユン)を育てるリウ(リウ・ペイチー)は、貧しいながらも息子を一流のヴァイオリニストとして成功させたいと願っていた。
ある日、チュンが北京のコンクールに出場することになったのをきっかけに、ヴァイオリンを習うため2人は田舎を離れ北京で暮らすことにする。
リウは何とかチュンをよい先生に師事させたいと、必死で頼み込む。
中国でもご多分に漏れず、クラッシックの世界はたいへんな競争社会だ。
生活するために、レッスン代を出すために身を粉にして働くリウ。
その父親の誠実さや優しさ、ひたむきな生き方を愛しいと思いつつ、かっこ悪いと思い始めるチュン。
大都会の人たちとふれあい、様々な経済観、生活観、生き様を見てチュンは大きく成長していくのだった。
コメント
心奪われるのは、作品全体を通して演奏されるヴァイオリン音楽の素晴らしさである。
私は普段、クラッシックを愛好しているわけではないからか、とにかく感動できる。
ヴァイオリン音楽がこれほどまでに素晴らしいとは思わなかった。
劇中の13歳の天才ヴァイオリスト、チュン(タン・ユン)の演奏は、感情表現が実に豊かでダイナミックに観客の心に訴えかけてくる。
友人のヴァイオリニストで、ニューヨークを拠点にヨーロッパやアジアにかけて幅広く活動している大津淳子さんの演奏を生で聴くチャンスが多々あるが、彼女のはもっともっと繊細で、激しい中にも優しさがある。
ぜひ、この機会にヴァイオリン音楽をもう少し味わってみようかと考えている。
残念ながら劇中の演奏は、実際には13歳の少年ではなく、ニューヨーク在住のオーケストラ奏者チュアン・ユンーリーのものである。彼は現在中国の最も卓越した若手アーテイストとして注目されていて、日本にもソリストとして来日が予定されているので演奏会に足を運んでみたい。
さて、作品の内容だが、中国の「現在」に驚いた。
10年程前に訪れた中国とは雲泥の差だ。
北京はどこの大都市にも引けを取らないほどビルが林立している。
昔ながらの中国と、お金がなければ成功が手に入らないという資本主義に席巻された中国の今が共存している。
かつての北京は、全員が人民服というわけではなかったが、ほとんどの人が無彩色の色の服を着ていた。
道は自転車に乗る人たちで一杯だった。
変われば変わるものだ・
「さらば、わが愛・覇王別姫」の監督チェン・カイコーは、この作品で、「中国映画は中国映画らしくあらねばならない」という目に見えない垣根を乗り越えた。
政治的、歴史的なものでなくとも受け入れられる中国映画を見せてくれた。
誰と一緒に行く?
音楽が好きな人と。
ヴァイオリンを志す子どもと。
家族で。
父と子で。