風よ吹け


2001年9月18日  「女優冥利につきる」


帝国劇場創立90周年記念公演「鶴屋南北 悪の華」(8月31日〜9月25日 帝国劇場)に行ってきました。主役は浅丘ルリ子。脇を固めるのが、長門裕之、藤間紫、永島敏行、多岐川裕美と豪華絢爛なキャスティングです。
4代目鶴屋南北というと、代表的な作品に「東海道四谷怪談」がありますが、言わずと知れた歌舞伎の脚本家です。得意としたのが、大胆奇抜な趣向、茶番趣味、怪奇残酷、下層民の描写でした。当時流行していた、ただおもしろいだけというのではなく、現実社会をより生々しく表現したところがうけいれられ大人気となったのです。
脚本は数々ありますが、残酷な殺人の場面や、観客が固唾をのんで見守るようなきわどい恋愛の場面が見せ場です。
この作品も同様、主役の大名家の姫、花子の前(浅丘ルリ子)は、男を恋い慕うあまり、尼になったり、遊女になったり、数奇な運命をたどります。さらに、それまでのひょうひょうとした場面とうって変わった殺人の場面は、残酷で救いがありません。
そこで演じる浅丘ルリ子の堂々たること。1人の名前で、帝国劇場1900席に1カ月あまり観客を呼ぶことができるなんて、女優冥利につきるではありませんか。
舞台の端々に、「私を観にお客様が集まってくださっている」というオーラが感じられます。
女優になるからにはこうなりたいと、誰もが願うことでしょう。そしてこれだけの力があるからこそ、自分にとってつまらない男を「捨ててやれ」と思うのも当然と、石坂浩二とあっさりと離婚したのが頷けました。
女性も力さえあれば、思うとおり生きていくことができるのです。


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