風よ吹け
2002年3月21日 「眠る遺伝子」
遺伝子の権威、筑波大学応用生物科学系教授、村上和雄先生にお話を伺いました。
研究者の話だから、まじめでアカデミックな遺伝子の話が展開されるのだろうと思いきや、意外や意外。実に、洒脱でユーモアに富んでいらっしゃるのに、まず驚きました。
いかに、一般人が難しい言葉で語られても何も理解できないかということを知り尽くしていらっしゃるようです。
テーマは「遺伝子をONにする」です。
よく、大学の先生というと専門用語を駆使し、四文字熟語やカタカナを連発される方がいらっしゃいます。
私は編集という仕事柄、原稿を拝見する機会も多いのですが、何度読んでも難しく理解できない原稿をいただくことが多くあります。専門書ではなく書店にならべる雑誌ですから、だれにでもわかる必要があるはずです。なるべく、簡単にわかりやすく、とお願いするのですが、普段アカデミックに暮らしていらっしゃる先生方が専門用語から離れるのは難しいようです。
村上先生のセミナーは、たいへん興味深く、さらに心に深くしみいる内容でした。
遺伝子にかける学者たちの世界。大学の世界。世界の遺伝子研究の現状。研究という地味な仕事。
私たちの身体を形成する多くの遺伝子は眠っていて、起こされていないだけだそうです。
ノーベル賞学者の遺伝子も、フツーの人の遺伝子も大差がないこと。
だから、誰にでもノーベル賞をとれる可能性はあるということ。
この話だけでも夢が広がります。もしかしたら、私にもノーベル賞がとれたのかもしれない。
そんなことはありもしないことですが、ただその違いは、刺激や環境の差だということです。
村上先生は、京大大学院農学研究科を卒業され、その後アメリカで研究を続け、1978年から筑波大学で遺伝子の研究をはじめました。そして、1983年、高血圧を引き起こしている源である酵素「レニン」の解読に成功されます。この瞬間、世界の頂点に立たれたのです。村上先生は学者の喜びは、ある一瞬世界のトップに立てるかもしれないということにあると、おっしゃいます
その喜びが、私の心にも響きます。
そして、66歳になられて今、新しい研究を初めておいでです。
だから、楽しくて仕方がないのだとか。
それは、「人の思いが遺伝子を変える」という仮説を立証するために、どんな心が遺伝子をONにするのかを知ろうというのです。
先生はイキイキ、ワクワクする気持ちが環境をつくり、スイッチをONにするのではないかと考えていらっしゃるのです。もし、それが本当だったら、とてもステキなことです。ぜひ、立証していただきたいものです。なぜなら、それは人は誰もがイキイキ、ワクワクすることを追求することが幸せに通じるということに他ならないからです。
そして、これからの日本は、人の生き方を示すのが使命だというのです。
世界中の人たちがイキイキ、ワクワクして暮らせたらどんなにいいでしょう。
餓えも戦争もなく、毎日ニコニコ幸せに暮らすことができたら。
病気も貧困もいがみ合いもなく、世界中の人たちの遺伝子がONになれば、地球は滅亡に向かわないかもしれません。
そして、最後に先生の言葉「人は、志と目的を持ち、そのためにたゆまぬ努力をする事が大切だ」ということを胸に刻みたいと思いました。夢を実現させることができれば、感動と喜びと感謝の気持ちがわいてくる。その心を、すべての人が味わえることを私は願います。