風よ吹け


2002年7月22日  「本当の顧客満足とは」


先日、恵比寿のデパートで閉店15分前にかけこみ、買い物をした時のことである。
その建物の駐車場に駐車をするとき、警戒のためここでは通常免許証を提示することになっている。
しかし、気をきかせた警備員は「買い物の時間がなくなるから」と、
「お急ぎください」とすぐに通してくれた。
たいへん細やかな心遣いに気を良くした。
こちらは、どうみてもテロをしそうな怪しい風体ではないのを見越しての配慮だろう。

デパートの中に入ると閉店までわずか10分ほどであった。
あわてて走り回り買い物をすませ、出ようと思った。
ここでは3000円以上だと駐車券がサービスになる。
カウンターに持っていくと2139円で861円足りないから
「駐車券はさしあげられません」ときた。
「時間がないから、もう買い物はできないから」と何度も言ったのに
頑として聞き入れない。

まず、「さしあげる」とは、どういうことなのか。
駐車券は顧客へのサービスなのではないのか?
「プレゼント」だとでも言いたいのだろうか。
時間が10分しかなく、欠品も多い中、買い物をしている客に891円どう買えというのか。
もう店内の照明は落としている。顧客は、数人しか残っていない。
そこで、買い物をしろというのか。
しかも、10分前にかけこむというからには、その店をよくわかっている固定客であるのに間違いないと判断できる。
現に、私自身、頻繁に買い物に行く場所である。

いったい、この百貨店のマニュアルはどうなっているのだろう。
そういう教育をしているのだとすると、あまりになさけない。

たいへん不愉快になったので、気分を変えようとすぐに、
そこから歩いていける大手のレンタルビデオショップに行ってビデオレンタルを300円した。
すると、そこでは60分相当の駐車券を渡してくれた。
たった300円しか売上が上がらない顧客に対しても
顧客を大切にしている、またきてほしいという気持ちがあふれているではないか。

本当の顧客満足とは何か。
何のために商売をしているのか。
顧客の望むものを提供し、来店頻度を上げ、店も顧客も喜ぶ関係作りがもっとも求められているものではないのか。

これからの経営は、人間の生き方としてもそうであるけれど、哲学がないと生き残れない。
デパ地下で気を吐く「神戸コロッケ」や「RF1」を展開するロックフィールドには、哲学がある。
人が口にする食を提供する限り、安全なものを提供する。なぜなら、それが健康と直結するからだからだ。その哲学は、かならず生活者に伝わる。だからこそ、けっして安くはない価格帯でも、いつも人気の店として人垣が切れないのである。

たとえ、商売であっても、売ればいいというのではない。
その後の信頼関係を築いてこそ生涯にわたっての、優良顧客となるのである。



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