風よ吹け


2003年4月9日  「大津純子コンサート チャップリンのアメリカ」


ニューヨークを拠点に世界中で演奏活動を続けている、
大津純子さんのヴァイオリン演奏は、実に素晴らしい。
優雅で繊細で、悲しくなるような心の響きがある。

彼女は2002年5月に、ご自身が企画した室内楽シリーズを始めた。
そのときのテーマは「GoodOldDays」、アメリカの古きよき時代を伝えようとしていた。
今回の2回目は「ライムライト チャップリンのアメリカ」というテーマで、
内容は、トークショーを交えたコンサートである。

しかし、いかんせん、彼女の意図が見えてこない。
確かに演奏は素晴らしい。
でも、企画したトークショーは必ずしもテーマにマッチしているとは言えない。

トークショーを切り盛りする音楽評論家の大御所、黒田恭一さんには
もっと音楽の解説をしてほしい。
あっさりしすぎていて、せっかくご登場いただいても生かされていない。
音楽と経済と言うことで登場した岩井克人さんと黒田さんとのトークは、
一体何を目的としたものだろう。
音楽興行で経済的に成功させるのが、いかに難しいかは、別にこの時話す必要はない。
大恐慌の時に、チャップリンが株を売り抜けた話も、「それがどうした」という感じである。

そんなことなら、なぜ、チャップリン映画の話を盛り込まないのか。
岩井さんがいくら映画好きだったとしても、映画に関しては素人である。
ここでは、映画評論家にご登場いただいて、チャップリン映画のもつ魅力や、黒田さんには音楽、そして、映画と音楽について話した方が、テーマが掘り下げられたように思う。

そしてさらに言えば、なぜチャップリンのアメリカを、
今大津さんが語りたかったのかがどうしても表出してこないのだ。
どんなことをするのも、時代性がとても重要ではないだろうか。


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