<外資系 超高級ホテルが続々と登場>
2007年9月1日に、東京・有楽町に「ザ・ペニンシュラ東京」がオープンした。開店して2度目の土曜日、9月8日に訪ねてみた。香港でも人気のアフタヌーンテイーが楽しめるラウンジ「ザ・ロビー」や「ザ・ペニンシュラブティック&カフェ」には行列ができ、さながら駅構内のような混みようだ。
デザインは、香港風というよりも日本が強く意識されていて、客室の扉は木の引き戸、天井は竹、エステルームの窓は雪見障子というふうに特色を出している。
客室数は314で、51平方メートル6万9500円(税込み)〜347平方メートル98万1950円。1階のベルボーイによるとと、今は16階から22階まではまだ稼働しておらず、順次空けていく予定だとか。客室内の設備で面白いのは、ドレスルームにネイルドライヤー、客室にエスプレッソマシーンが備えられていることである。
これまでに、次々に東京に登場した超高級ホテルをあげてみよう。
2001年、渋谷「セルリアンタワー東急ホテル」
2002年、東京駅八重洲口「丸の内フォーシーズンズホテル東京」
2003年、六本木「グランドハイアット東京」
2005年、芝公園「東京プリンスホテル パークタワー」
汐留「コンラッド東京」
日本橋「マンダリンオリエンタル東京」
2007年、3月「ザ・リッツ・カールトン東京」
これらどこも一泊5万円以上のホテルばかりだ。
「マンダリンオリエンタル東京」は、179室。45インチ以上の液晶ハイビジョンテレビを各室に設置し、部屋でゆっくりくつろぐ環境を整えている。レストランも充実。広東料理、フレンチ、イタリアンなど8箇所あり、とくに広東料理のレストランはモダンな中華を提供し、上品な味と従業員の笑顔が印象的なレストランだ。
「ザ・リッツ・カールトン東京」は、248室。世界のリッツマン(ホテル従業員)たちはサービスがよいことで知られるが、ここ東京は「まだこれから」といったところ。ただ、顧客の要望にこたえることができ、今日より明日、明日よりあさってと、日々研鑽している様子が受け取れて期待できる。
<一泊7万円もするホテルに、いったい誰が泊まるのか>
ところで、このような価格帯のホテルがこんなにたくさんできて、宿泊客が果たしているのだろうか。考えられるのは、富裕層のお年寄り、最近富裕層になった人たち、たまには贅沢したい層とがいる。
富裕層のお年寄りは、すでに帝国ホテル、ニューオータニ、オークラと今まで高級ホテルといわれていたところの常連になっているため、新参ホテルに一度は足を運ぶかもしれないがよほど気に入らなければ常連客にはならないだろう。
最近富裕層になった人たちは、取り込みやすい顧客だ。たまに贅沢したい層は、上記のホテルに加えて、新宿パークハイアット、恵比寿のウエスティン、目白のフォーシーズンズなど多くの選択肢を持って、その日、そのときの気分で回遊すると思われる。気に入って、何度か宿泊してくれるようになればありがたい。
従業員に話を聞くと「たしかに、以前勤めていたホテルで存じ上げていたお客様に、新しく移ったホテルでもまたお目にかかります。日本人のお客様の層は、だいたい決まっているのかもしれませんね」という答えが返ってきた。
あとは、外国人のエグゼクティブをいかに確保できるかにかかっている。世界のマーケットは広い。
<顧客獲得と、人材の確保>
顧客を確保することとあわせて重要なのは、いかに優秀な、ホスピタリティあふれる人材を集めることができるか。そして彼らにいかに、そのホテルの文化を伝え、実践させることができるかである。
当然のことながら、ホテル業界では優秀な人材の移動が活発に行われている。
「あの人が、、、というような方まで引き抜かれていきます」と語るホテルウーマン自身も、ここで4件目のホテルだと明かす。ザ・ペニンシュラの総支配人はパークハイアット東京で7年間総支配人を務めたマルコム・トンプソン氏が就任したというのだから、ヘッドハンティングされたのであろうことは明らかだ。
9月7日、トヨタの顔といわれた北米トヨタの社長がクライスラーに引き抜かれたという記事が躍り出た。1970年に入社し、37年間トヨタの言葉で会話ができるといわれたアメリカ人だったが、クライスラーの共同副会長件社長になる。
優秀な人材はどこでもひっぱりだこだ。企業にしてみれば、どのようにすれば引き抜かれないすむか、常に従業員にとっても満足度の高い企業である必要がある。
<日本の高級ホテルの衰退>
優秀人材がどんどん流出してくため、今まで日本で高級といわれていたホテルの従業員の質がかなり下がっている。笑顔のないホテルマン、サービスができない配膳係、要領を得ない宴会担当、「どうしてこんなことができないのだろう」と驚くほどのレベルダウンがあちこちで見受けられる。
プリンスホテル系などは、それに加えて、エレベーターの壁や廊下の汚れが目立ち、じゅうたんが毛羽立つといったハード面での落ち込みも加わる。
「自分に声がかからなかった」「移ろうと思ったけど移れなかった」といったモチベーションの下がった、やる気のない状態で顧客を迎えても困る。ホテルとしての格式やサービスを下げないためにはどうしたよいか、真剣に考えなければ顧客は離れる一方だ。
そうしたホテルにも昔は、伝説のホテルマンといわれる人材が数多くいた。高齢化に伴い、彼らのノウハウは伝授されないまま、消えてしまったのだろうか。
以前、あるホテルのビップ用の駐車場に気づかずに駐車してしまったことがある。そのときに「あなたはビップですか?」と声をかけられた。ホテルマンらしからぬ声のかけ方のように感じた。また、駐車していた車のトランクに押し込められて路上に放置された犯罪が起きたのも、同じこのホテルである。
<ホスピタリティあふれる人を育てるには>
何とか対抗措置を生み出していかなくてはならない日本のホテルは、今改装をし、人気のスパを充実させ、顧客を取り戻そうとしているが、人材教育を充実させなければそれも無駄に終わる。
まず、ホテルの文化を、働く人全員にきちんと伝えること。そのためにも強力なリーダーシップが必要だ。そしてその理念やコンセプトを全員が理解し、すべてのサービスに実践させることができるか。いくらすばらしいビジョンがあっても、それを毎日目の前の顧客に対して行うことができなければ、絵に描いた餅に過ぎない。
顧客からも、従業員からも、愛されるホテルにはなるためには、どうしたらよいか。
日々学び、磨き上げ、顧客の声に耳を傾け、従業員のモチベーションが上がるような仕組みづくりと、何のためにそのホテルが存在するのかを、経営者も従業員も顧客も、すべてが実感できるようにすることが大切だと考える。
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