<< ジャーナリスト岩崎由美からのお便り その53>>


東日本大震災から一年がたちました。
被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早く、心安らげる日が来ますように、お祈り申し上げます。



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┏┏■   「農家のこせがれネットワーク」稼動中
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■ 目次 ■
1. 「農家のこせがれネットワーク」稼動中
2. 企業リポートは「ヤマキ醸造」
3. おすすめエンターテインメントは映画『種まく旅人』


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┃ 「農家のこせがれネットワーク」稼動中
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こんにちは。
ジャーナリストの岩崎由美です。

気がつくと、もう春まっさかり。
桜に沈丁花にパンジー、チューリップ。
春の香りで一杯です。

先日「農家のこせがれネットワーク」交流会に取材で伺ってきました。
集まるのは、農家のこどもたちで、大半が都会で仕事をしています。

「親が年をとってきたけど、このままで大丈夫か」
「田畑があるけど、誰かが守っていかなくていいのか」
さまざまな悩みや迷い、果たして自分にできるのか、あるいは何が自分にできるのかといった不安など、色々な思いを抱えた人たちが集まって話をする。
同じ仲間と集まれば、何かが開けるかもしれない。前向きに考えていきたいと、みなさん前進する意欲満々です。
中には、自分は決心して実家に戻って農業を継いだが、なかなか若い農業関係者と話す機会がないからやってきたという方もいます。そういう方たちも一緒になって話せば、一歩踏み出す勇気につながるかもしれません。

30名ほどの参加者のご実家で育てているものは様々で、大豆、野菜、米、果物、牧場、花など、地域も全国に拡がっています。
活気に満ちた会に、農家の方は帰る家・屋敷があって、土地があって、自然があって、食べ物があって、近隣の方たちからも支えられて、なんて豊かなんだろう、数字には表せないかもしれないけれど大きな財産だなぁと感じました。

この会の代表は、湘南で養豚業を営む宮治勇輔さん。
日本の農業を何とかしよう。そのためには、農家の子供たちを実家に帰すことだ。さらにイノベーションを起こすためには人との出会いがすべてであると考えています。

宮治さんも大学を卒業したあと、実家を継ぐ気などまったくなく企業に勤めていました。ただ、起業しようという思いがあって、ひたすら勉強をしていたそのときに出会ったのが「農業」。惹かれるものがあったと言います。
農業をきつい、汚い、かっこ悪い、臭い、稼げない、結婚できないというものから開放し、かっこよくて、感動できて、稼げるものにしよう。
それを実践するために実家に戻ります。実家に帰ってからは、生産から販売までを一貫してプロデユースする仕組みを作り7年がたちました。現在、今までにない養豚農家として、生活者から愛される豚肉「みやじ豚」を直販しています。

「こせがれネットワーク」では、他にも地域ごとの交流会、農家とレストランや消費者を結びつける、六本木農園というレストラン、ヒルズマルシェの開催、また財務経理を学ぶための塾を開いたりと様々な活動をしています。

あちらこちらからあがる、日本の農業を再生する声。

農業は本当にステキです。ですから尊敬と、憧れをこめて「かっこいい」と言いたい。
私たちの食を担ってくれて、本当にありがとうございます。



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┃ ヤマキ醸造を訪ねました
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埼玉県にある「ヤマキ醸造」を訪ねました。三越伊勢丹ホールディングスが展開する「クィーンズ伊勢丹」の、春休み工場見学・体験教室です。「醤油もろみ搾り体験」をしてきました。

ヤマキ醸造は、「御用蔵」というブランドの味噌や醤油、豆腐を製造しています。
明治35年創業。
建物の中には、100年前の木の樽が並んでいて、とても神聖な感じがします。

醤油は、大豆と小麦と塩と水でできています。
大豆を蒸して炒って砕いた小麦を混ぜ、ここに種麹を加え、麹ができたらそこに塩水を混ぜ合わせてもろみを作ります。このもろみを仕込み、一年かけて発酵、熟成をしていきます。
木の樽で作ることで、まろやかで深い味わいになる。木が呼吸をしているからでしょう。
ただし、木樽は手入れが大変です。しかも100年前のものを使っているのですからなおさらです。
大豆と小麦は、土作りからこだわり、有機栽培で大切に育てています。畑は自社のもので、生産者を始め従業員も一緒に育てています。塩は国産。近くで湧きだす「神泉水」というすばらしく清らかな水を使います。

量産はできませんが、高品質で、安全安心な発酵食品をつくり続ける。
昔ながらの天然醸造法で、ゆっくりじっくり大切に大切に育む。
手間ひまかけたこだわりの製品には多くの人たちの愛情がこもっています。

「もろみ搾り体験」のときも、ご担当の方から「丁寧に作業してください」「大切に作っていることに思いをはせてください」「大事に大事に育てている作物を使っています」「あわてなくていいですからね」と声がかかります。

もろみは、布で包んで搾ります。といっても、包んで重ねるだけ。上から板で押さえますが、力任せに押さえるというのではなく、じっくりゆっくり丹念に体重をかけていきます。

こうしてこぼれおちた液体を生醤油と呼び、ボトルに詰めて、ラベルをはって、自分たちで持ち帰ります。生醤油は酵素、酵母、乳酸菌が生きているので、長期保存には適しません。一般に流通しているのは、これを火にかけて加熱殺菌処理されたもの。味わってみると、今までに頂いたことのない清冽な味がしました。

醤油は、今では世界中で認知されていますが、出荷量はここ30年で30万リットル近く減少しています。1973年に129万リットルあったのが、2002年には100万リットルに届きません。醸造所も1955年に6000あったものが2009年には1523にまで減っています(農林水産省調べ)。
日本食離れや、少子化、家であまり料理をしなくなったことなどが影響しているようですが、日本ならではの調味料、大切にしたいものです。
今、発酵食品が見直されていますが、伝統の醤油や味噌、麹や糠といったものを改めて大事にしていきたいと感じました。

ヤマキ醸造さま、クィーンズ伊勢丹さま、お世話になりました。ありがとうございました。






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┃ おすすめエンターテインメントは映画『種まく旅人』
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今回は、農業の話ばかりですが、映画にも「農業」の流れが来ているようです。
『種まく旅人〜みのりの茶〜』は、爽やかな作品。
大分県・臼杵市の茶農園を舞台に、後継者問題、無農薬栽培農家の抱える課題などが、エンターテインメントとして仕上がっています。

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デザイナーの森川みのり(田中麗奈)は、ある日退職を余儀なくされ、先が見えない中、学生 時代の友人が営むオーガニックカフェを訪ねる。自分らしく生きる友人の姿に憧れ、自分には一体何ができるのか自問自答する。近隣の、久しく顔を出していな かった祖父(柄本明)を訪ねると、一人で無農薬のお茶作りに孤軍奮闘する姿があった。その夜、突然金ちゃん(陣内孝則)という男が祖父を訪ねてきて、なに やら親しげで、楽しそうに打ち溶け合っている様子に帰るタイミングを逸してしまう。
そんな時、祖父が病気で倒れる。心をこめて大切に育ててきた無農薬の茶農園は手をかけなければだめになってしまう。市役所の職員卓司(吉沢悠)には、大変だと諭されるのだが、金ちゃんの応援を得て、みのりは祖父の代わりに茶畑に入るのだった。

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全国の農家を回って現場の声を聞きこれからの農業を探る農林水産省の役人・大森金二郎に陣内孝則。たまたま祖父の家 を訪ね茶畑を世話することになった孫娘に田中麗奈。お茶の無農薬栽培にこだわる祖父に柄本明。市役所の青年職員・卓司に吉沢悠。そのほか、永島敏行、石丸 謙二郎、寺泉憲など実力派俳優が多数出演しています。
お茶栽培のたいへんさや、今の農業が直面する問題点などをおしつけがましくなく、そっと提示する。
画面 に広がる緑の茶畑を見ると、こんなに広い畑の作業をするのは、どんなにたいへんなんだろうと感嘆するばかりです。
雨の日も、風の日も休むことなく、命ある お茶を育てる。しかも、自分のためではなく、飲んでくれる人が喜んでくれるお茶を作るために、日々奮闘しなければ美味しいお茶は育ちません。生茶をお茶に 仕上げる工程は、まさに人の手でお茶が出来上がっていくのがわかり、臼杵の「釜炒り茶の手もみ」の様子は、ふくいくとした香りが漂ってきそうです。
今度は「お茶摘み体験」、是非してみたいですね。
皆さん、ご一緒しませんか?
『種まく旅人〜みのりの茶〜』




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