TODAY'S ENTERTAINMENT
 
2004年6月17日(木)
No016 映画「誰も知らない」


切なくてたまらない。少年の精一杯さが。
言葉に出さなくてもそれは伝わってくる。
友達と遊びたい盛りなのに、遊ぶこともできず、学校へも行けない。
帰ってこないとわかっている母親を待ちながら、なぜ今生きるのかを問いかける。

それは、妹や弟たちをいとおしいと思う兄の心のなせるわざなのか。
それとも母親に「兄弟を頼む」と言われ、母親からの頼みを聞きたいという母への愛なのか。

物語は、母親と12歳の少年がアパートに引っ越してくるところから始まる。他の3人の子供たちはトランクの中に隠れて部屋に入り、いることを知られないようにしている。母親と子供たちは仲良しだ。4人の子供たちはそれぞれ父親が違い、学校にも通っていない。ある日、母親はわずかな現金と短いメモを残して家を出てしまう。
これは実話に基づいてつくられている。

淡々と、悲しく、時に理不尽さに腹立たしく、ほんの小さな喜びに胸をときめかせながら観客は2時間の映画の世界を生きる。
外界と遮断された4人だけの空間は、兄の精一杯さだけでもっている。

それぞれの子供たちの心になってみる。
母親にもなってみる。「どうして幸せになっちゃいけないのよ」という母親の叫び。
「勝手すぎるんだよ」という兄の慟哭。
まだほんの小さな子供なのに、夢を捨て、遊びを捨て、何を求めて生きたらよいのか。
そこにあるのは、命を生きているということなのである。

カンヌ映画祭主演男優賞 最年少受賞
夏休み公開

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