TODAY'S ENTERTAINMENT
 
2004年9月26日(日)
No019 映画「モンスター」


シャーリーズ・セロンって知ってますか?
「ノイズ」や「サイダーハウス・ルール」のヒロイン、ブロンド美女である。
「世界で最も美しい50人」に選ばれるほどの整った顔立ちで、バレエで鍛えた引き締まったボディーを持ち、百人力だろうと思っていたら、
本人にとってはどうもそうでもないらしい。かえって美貌が邪魔をするのだとか。
「いつも回ってくるのはセクシーなブロンド美女の役ばかりで、型にはめられるのがいやだから」とあえて、そういう役は断り続けたと言う。

それにしてもこの実在する娼婦で連続殺人犯「モンスター」の役をやろうとは・・
まさか、これがあのシャーリーズ・セロン??本当??
と何度も目を疑ってしまった。だらしなく太り、髪もばさばさ、着ている物も不潔だ。
体重を13キロ増やし、眉を抜き、義歯をつけ、肌にそばかすや日焼けを施し、まぶたにはゼラチンで重みをつけた。
粗野な表情をし、話し方、身のこなしもまったくの別人。もちろん外見だけではない。虚勢を張ってはいるが、内面はボロボロに傷ついたモンスターを演じている。

私の大好きなテレビ番組「アクターズ・スタジオ」でインタビューをするジェームズ・リプトンに、その変貌振りを「女性版、ロバート・デニーロ」とまで言わせた。

肉親の暴力に苦しみながら貧しい少女時代をすごしたアイリーンは、娼婦になって街を流していた。夢も希望もない毎日は、絶望の一言。有り金を使い果たしたら自殺しようと決め、入ったバーでセルビー(クリスティーナ・リッチ)と出会い恋に落ちる。二人で暮らすためにとった客に殺されそうになり、思わず相手を殺してしまう。それから二人の逃避行が始まる。生活のために、彼女を買う男たちを殺していくアイリーン。行くつく先は一体どこなのか。

フロリダなのに荒涼とした場所、貧しさから這い出せない人々、まともに働こうにも働けない門戸を閉ざした社会。誰からも愛されず、大切にされたことがないアイリーンは、どんなに愛情を渇望していたことだろう。生まれながらの環境や、自分の力ではどうしようもない回りの人々から抜け出せない現状というのもあるかもしれないとつくづく思わされた。
そんな時、人はどうやって這い出すのか。
勉強する?精神力をつける?スポーツをする?音楽で身を立てる?
どれも秀でた才能がなければならないことばかりだ。もし普通の人だったら、結局は抜け出せないのだろうか。
私がテレビキャスター時代、番組の手伝いをしていた2部(夜間)に通う大学生と就職の話しをしたことがある。「やりたいと思ったら、やりとげるべきよ。きっとかなうはずだから」と言ったら、「一流大学の岩崎さんには、僕らのことは分かりませんよ」と言われたことがある。彼はそして、「最初から社会に受け入れてもらえない見えないベールがあるのだ」と語ってくれた。そのとき私は、自分の愚かしさに恥じ入り言葉を失った。自分を基準にすべてを考えるのは、あまりにも浅はかだったのかもしれないと。

実生活でシャーリーズ・セロンは、アルコール中毒の父親に殺されそうになり、
母親が彼女を守るために父親を撃ち殺すという経験をしている。
美しいシャーリーズ・セロンを見たい人は、見ないほうがいいでしょう。
でもこの役で彼女はアカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞したのです。

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