TODAY'S ENTERTAINMENT
 
2006年7月28日(金)
No040 アカデミー主演男優賞を受賞した映画「カポーティ」


主人公は、フィリップ・シーモア・ホフマン演じるトルーマン・カポーティという作家で
「ティファニーで朝食を」などを書き、シナリオライターでもあり、
華やかに世界を飛び回る売れっ子の人気小説家です。

その小説家が自ら新境地を開きノンフィクション小説を書こうと
約5年の歳月をかけて実際に起こった事件の関係者に迫っていく。
そのさまが、リアルタイムで描かれています。

事件は生々しい殺人事件で、その犯人や犯人をとらえた警察官、
周辺住民に取材し、心のひだに入り込んでいきます。

僭越ではありますが、ついジャーナリストである自分の日々と重ね合わせてしまいます。
取材したい対象にどうやってコンタクトをとっていくのか。
どうしても話したくない人の口を開かせるためにどんなことをするのか。
相手の懐に飛び込み本音を引き出すために、どう語りかけるのか。
相手の気持ちに共感したときに、どのようにして自分の心を侵食されないようにするのか。

正直言って、恐ろしくなりました。
物を書く人、表現する人が、対象に近づけば近づくほど、相手との垣根が分からなくなるのではないだろうか。
理解できなければ、感動を生むものは書けません。
理解できたときに、相手の心に侵食されずに、どれだけそれまでの自分を保っていられるでしょうか。

そしてカポーティは、文学史上大きな影響を与える『冷血』という最高傑作を書き、
心を失ってしまったかのごとく、その後ひとつも作品を残すことはありませんでした。


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